COVID-19 パンデミックによって、世界中のソフトウェア開発者が在宅勤務に移行しています。COVID-19期間中の在宅勤務がソフトウェア開発者のウェルビーイング、すなわち身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることと生産性に与える影響を明らかにすることは、この未曾有の危機への対応を考えるとともに、記録としても重要であると考えられます。
カナダ・ダルハウジー大学のポール・ラルフ教授が、この影響を分析するための国際的なアンケート調査を実施しました。日本においては、奈良先端大ソフトウェア工学研究室の畑秀明先生がこのアンケートの実施を担当しておりました。まず、アンケートの配布にご協力いただいた皆様、ご回答いただいた皆様に、この場を借りてお礼申し上げます。
本研究結果の速報について、畑先生に日本語版を作っていただきましたので、以下、ご紹介します。
このアンケート調査は、各国のソフトウェア工学研究者によって、アラビア語・中国語・英語・フランス語・イタリア語・日本語・韓国語・ペルシャ語・ポルトガル語・スペイン語・ロシア語・トルコ語の12言語で用意され、COVID-19の影響でオフィスから在宅勤務に変更した2,225人の有効回答を得ました。回答は53カ国から寄せられており,ドイツ・ロシア・ブラジル・イタリア・米国・韓国・ベルギー・中国・トルコ・インド・日本・スペインからはそれぞれ50人以上の有効回答がありました。
アンケートの回答から、以下のような影響が出ていることが分かりました。
- ソフトウェア開発者のウェルビーイングと生産性に悪影響が出ている。
- ウェルビーイングと生産性に密接な関係がある。
- 人間工学的に好ましい在宅勤務環境はウェルビーイングと生産性の改善に役立つ。
- 女性・子を持つ親・障害を持つ人々が特に大きな影響を受けており、一律でないサポートが必要である。
これらの分析結果から、ソフトウェア企業の行動としては、
- COVID-19期間中に在宅勤務する従業員のウェルビーイングを支援すること、
- 機器やサービスなど何を必要としているかを従業員に尋ねること、
- 在宅勤務環境をよりよくする支援をすること、
- これまでと同レベルの生産性を求めないこと、
- COVID-19期間中の生産性によって解雇や人事異動などの決定をしないよう配慮すること、
が重要であると思われます。
本研究結果の速報については、プレプリント・サーバーのarXiv.orgに公開されております。
また、得られたデータなどはポール・ラルフ教授のWebページで公開されています。
https://paulralph.name/2020/03/27/pandemic-programming-questionnaire/